セレンディピティの逃亡劇 [2]








こんな夜中に私は何をしているのかしら。分からない。分からない。だけど私は何を考えるわけでもなく荷物を整理して最後に部屋全体を見回してみた。



どことなくいつも見てきたこの部屋が寂しく感じでルームメイトの寝息が小さく聞こえてくる。脳裏にハリーとロンの笑顔が見えたけどすぐさま消した。さようなら、さようなら、さようなら…。心の中で何度もそう言って深呼吸をすると箒にまたがり、窓から空へと飛び立った。



星の輝く夜空は何も言わない。反対もしなければ賛成もしない。

それは当たり前だけれど私を止めているように見えた。バカな事をするな、自分を見てみろ、こんな事をしても何も変わりはしない、と。



だけど、私は正気よ。



後悔なんてするもんですか。これは私が決めた道。ハリーやロンに止められようが、彼らを裏切る事になっても私は行っていたと思う。この世界中の人々が敵にまわってしまったとしても私は彼についていくと思う。何があっても離れる事などない。



「ハーマイオニー、来たか」



ハグリットの小屋の前で箒から降りるとハグリットが優しい笑顔で私を迎えてくれた。



「こんばんは、ハグリット。彼は来てるの?」

「ああ、ついさっき来たところだ」



どうやら彼はもうすでに到着しているらしい。

私は箒を左手に、鞄と右手に持って小屋の中へと入っていった。







「寒い。さっさと閉めろ」



前を見るとマルフォイが居て、私を見るとすぐに彼は不機嫌そうに言った。私はハグリットが小屋に入ってからマルフォイの言う通りに扉を閉めた。



「ハーマイオニー、飲むか?」



ハグリットは私に入れてくれるであろう、紅茶を準備しながら聞いてきた。

軽く「えぇ」と返事をして私はマルフォイの向かい側の椅子を引いてそこに座った。



「マルフォイ、本当に来たのね…」



机の上で手を組んで呟いてみた。



「君こそ来るとはな」

「当たり前よ。前々から計画していたもの」

「それは僕だって同じだ」

「…そうね」



カチコチという時計の音とハグリットが紅茶をかき混ぜる音が妙に響いて聞こえた。窓の外では寒そうな北風が窓を叩く音が聞こえる。



「ホレ、ハーマイオニー、紅茶だ」

「ありがとう」



ハグリットが私の前に紅茶を出した。じっとその紅茶を見つめていると3年生の時の占い学を思い出した。なんとも最悪な思い出を思い出してしまって気分が悪くなる。占い学なんて本当に最低だわ。



「おい」

「何よ」

「何でそのマフラーなんかしてくるんだ」

「え?」



マルフォイは私が横に置いたグリフィンドールのマフラーを指した。



「まさかそれで行く気か?列車の中でそんなもんしてったらバレるだろ」

「あ…」



そういえばそうだった、なんて思いながらマルフォイの方を見ると机の上に黒いシンプルなマフラーが置いてあった。



「それに、そのマフラー見てると…」

「?」



マルフォイは私から目を反らし言いにくそうにして何か言おうとしていたけれどもう1度私を見て止めてしまった。



「…何でもない」

「そう、ならいいけど…」



別に気にしてないような声を出したけど内心は気になっていた。

彼が私に何を言うつもりだったのかすごく気になる。だけど今はそんな事追及しても仕方がない。腕時計を見ると時刻は長針が20を指すところだった。20分なんてあっという間だなぁ、とぼーっと思っていたがはっとして鞄の中からあれを取り出そうとした。マルフォイは私が何を取り出すのかと見ている。

そして、机の上に置くと私は言った。



「出発は午前2時58分よ」



マルフォイは机の上に置かれたキングスクロス駅行きへのチケット2枚を見つめた。












※さっさと出発すりゃいいのにね。